2021年9月定例会などについての見解

2021年10月14日
日本共産党山形県議団
団長 渡辺ゆり子
関徹

 2021年度9月補正予算が全会一致で可決・成立しました。日本共産党県議団は、補正予算を含むすべての議案に賛成しました。県民に対する説明責任を果たす立場から見解を表明します。
 今定例会でも、新型コロナ対策は最重要テーマでした。コロナ感染症で亡くなられた方々に心からお悔やみ申し上げますと共に、罹患された方々にお見舞い申し上げます。
 並びに、感染拡大防止と感染者支援に当たられた皆さまに、敬意と感謝を申し上げます。

(1)2021年度9月補正予算について

 政府は、8月に「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金(事業者支援分)」を都道府県に2000億円追加交付し、山形県には限度額25億円余(前回4月は38億円余り)が配分される見込みです。
 コロナウイルス感染症が拡大した8月の第5波が、第4波と比べて、大きかったことを見ても、政府の支出の規模は小さく、また小出し感が否めません。昨年度実施した持続化給付金や家賃支援も未だに実施されていません。依然として不十分な対策が続いています。
 県2021年度9月補正予算には、地方創生臨時交付金を活用した、飲食店関連事業者への家賃支援(7億円余)などが盛り込まれました。コロナ禍の自粛により飲食店に止まらない多くの業者が大きく影響を受ける中、限られた内容ではありますが、業者支援として必要な事業です。
 6月定例会で可決した「県内事業者に対する事業継続応援給付金」(今年4~6月の売上げが前年(前々年)同月比で50%以上の減少の事業者に法人20万円、個人事業主10万円補助、今年9月末締め切り)については、申請も簡素で、対象業種を限定しなかったことで申請手続きに慣れない零細業者も申請することができ、業者から「ありがたい」「助かった」の声が聞こえます。
 一方で、「応援給付金」について、「売り上げの減少50%未満への対象拡大」「対象月を7~9月」など制度拡充を求める要望が山形県商工団体連合会から出されていましたが、9月補正では対応がありませんでした。
 県議団は新型コロナの影響発生当初から減収への直接補償の拡充を求めてきました。10月6日の商工労働観光常任委員会でも、渡辺県議が「応援給付金」の施行状況を尋ね、県は同事業費が10億円程度余る見込みを明らかにしました。引き続き「応援給付金」、幅広い業者支援の拡充を求めていきます。
 他に補正予算では、昨年度で打ち切りになっていた1人5万円の「解雇・雇止めをされた方への応援給付金」が復活します。今年4月まで遡及して実施されます。渡辺県議が商工観光常任委員会で取り上げていたものです。コロナ臨時交付金が対象となったことで実施するものです。関係者の努力に敬意を表します。
 また、出産支援給付金の対象が拡大されます。当初、来年1月以降に生まれた新生児を対象としていましたが、今年4月2日以降に生まれた新生児にも遡及して5万8千円が給付されます。就労継続支援B型事業所の利用者への5千円給付、医療的ケア児・生活困窮者への県産不識布マスク配布など、いずれも県民の要望に応える事業です。(新型コロナウイルス感染拡大防止対策、米価対策・凍霜害雹害対策支援は別掲)

(2)一般質問(9月27日)で関県議は以下の項目を取り上げました。

  1. 南庄内の医師確保を医師総数を増やすことを国に
  2. 売上50%以上減少した事業者に止まらない支援を
  3. 米価大暴落政府にMA米の輸入縮小・中止、過剰在庫買い入れ、欧米水準の食料支援制度創設を
  4. 学校の安全対策の取り組み強化と『危機管理マニュアル』改訂を
  5. 「臨時休業の判断基準」を具体的に定め周知徹底を
  6. いじめ防止の取り組みの強化を
  7. 過度の競争主義のもとでのストレス増加、自己肯定感・幸福感の低下等、児童生徒の状況について、教育長の所見は
  8. 新自由主義下の県の現状について知事の認識は

(3)常任委員会、特別委員会の質問について

i)常任委員会

「厚生環境常任委員会」で関県議は以下の項目を取り上げました。

  • 特別児童扶養手当について
  • 保健所の体制強化を
  • 病院へのwifi導入について
  • 新型コロナ回復後受入医療機関への空床補償の延長について

「商工労働観光常任委員会」で渡辺県議は以下の項目を取り上げました。

  • 6月補正の事業継続応援事業の執行状況と今後の支援、
  • 飲食業関連家賃等緊急支援の対象について
  • 解雇雇止めされた方への応援金の周知と状況把握について

ii)特別委員会

「経済活性化・雇用対策特別委員会」で関県議は以下の項目を取り上げました。

  • 若者離職防止のために高校生への企業の情報提供と、企業の啓発について

「健康医療・女性若者活躍対策特別委員会」で渡辺県議は以下の項目を取り上げました。

  • 女性・若者が山形で暮らしやすい事例を示すなどの提示と発信を
  • 国と連携した支援の拡充
  • 困難を抱える若者女性の底上げ

(4)新型コロナウイルス感染症対策について

 県は9月補正予算に「酸素ステーション設置事業」を計上しました。急激な感染拡大で入院先が決まらない場合に酸素吸入などを行いながら入院待機するためのもので、内陸、庄内に15床程度づつ配置される見込みです。国の事務連絡では①宿泊療養施設②臨時の医療施設③医療機関に併設した場合を想定していますが、どのパターンになるか明らかになっていません。いずれにしても従事する医療従事者の確保が最大の課題となります。
 新型コロナウイルス感染症の拡大は、保健師不足を浮き彫りにました。感染者の増加に伴って保健師をはじめとした職員の残業が増加しています。県は今年4月から7人の保健師を採用しましたが、来年度に向け10人の保健師を募集していることを明らかになしました。来年度まで拡充される地方交付税措置を活用した対応です。(厚生環境常任員会の関県議質問)保健師は積極的疫学調査や相談対応など、コロナ対策でも地域の要となる業種です。想定される第6波に向け、前倒し採用も含めて更なる拡充を検討すべきと考えます。そもそも、今起こっている医師不足、保健師不足などの根本には40年来の医療・公衆衛生切り捨ての新自由主義の政治があります。新自由主義を転換し、憲法25条にある「公衆衛生の向上・増進」に国が責任を果たすことが強く求められます。

(5)米価下落、凍霜害・雹害対策について

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う観光業や飲食店の営業自粛・停止により、米の外食需要が大きく縮小しています。
 JA全農山形の2021年産米の概算金は、つや姫は昨年比500円減に止まりましたが、雪若丸は2,300円減の10,600円、主力品種「はえぬき」は2,200円減で10,000円となりました。本県の2019年産の米の生産費が60kgあたり12,422円、物財費だけで8,013円という中でのこの概算金に、大規模農家を含めて「もうやっていけない」という声が広がっています。
 政府は米の過剰在庫の解決をもっぱら農家や生産者団体の自助努力に求め、昨年秋には6.7万ヘクタールという過去最大の減反拡大を打ち出した。その中でも、国内需給を圧迫するミニマム・アクセス米は一切削減されることなく77万トンが全量輸入されています。脱脂粉乳・バターのように国内の需給状況に合わせて輸入量を調整するべきです。
 9月16日に行われた県農民連の県要望で「農家は生産調整を守ってきた。『たくさん作った方がよかった』と言う事になっては、今後の行政と農家の信頼関係に及ぼしかねない」という声などが出されました。
 今定例会の追加補正予算には、コメ農家への無利子融資、新米を活用した観光キャンペーンが盛り込まれました。既に県は6月定例会で学生や生活困窮世帯にコメを送るなどの支援しながら、全国知事会などで「海外に対する支援米などを行いながら市場隔離の実施」を政府に要請しており、そうした取り組みを評価するものです。
 一方で、10月8日現在、政府の支援内容は未だに明らかになっていません。米作り農家の存亡に関わる事態に政府は、早急に対応すべきです。

(6)凍霜害、雹害について

 5、6月に発生した凍霜害、降雹害について、サクランボをはじめとする果樹・野菜などで約137億円という被害が明らかになりました(8月31日現在)。
 共産党県議団は、被害が発生した直後の5月28日、県に対策を早期に示すように口頭で申し入れ、6月3日には、山形県農民連の「早期対策の実施」を県要望に同席しました。
 そうした中で今回の補正予算に凍霜害・雹害対策約3.5億円が計上されました。果樹・野菜などで減収率が50%以上等(事業実施後、収入保険又は農業共済へ加入)を対象に「肥料・農薬購入費」の最大1/2を支援する独自策が打ち出されました。農民連から意見があった「面積」に応じた定額支援も盛り込まれました。
 国も8月に「凍霜害・降雹害に対する支援策」を公表、サクランボなど出荷量が平年比50%を下回った生産者に10aあたり14,880円を支援するという方向です。県は県内で2億円程度になるのではないかと見込んでいます。一方で、農家からは国の支援は「よかった」という声があるものの「お見舞い程度だな」との被害額に対してわずかな支援との受け止めがなされています。福島県は国の復興予算を活用し、10a当たり36,000円が支給されると報道されています。被害の実態に見合った国の支援が強く求められます。

(7)請願について

 今定例会には、生活協同組合共立社から「日本政府に核兵器禁止条約の署名及び批准を求める意見書の提出について」、少人数学級をすすめる県民の会から「安全・安心で、ゆきとどいた教育実現につながる30人学級の実現を求める意見書の提出について」、農民運動山形県連合会から「新型コロナ禍による米の需給改善と米価下落の対策を求める意見書の提出について」が提出され、渡辺・関両県議が紹介議員となりました。

 各請願は市町村議会でも提出され、核兵器禁止条約の署名批准を求める請願は、県内22市町村、「30人学級の実現を求める」請願は、25市町村、「米価対策を求める」請願は、12市町で採択となり、県民運動が進んでいます。
 審査結果はいずれも継続となりましたが、少人数学級をすすめる県民の会から提出された請願を契機に「少人数学級編制に向けた計画的な教職員定数改善と必要な財政措置を求める意見書」が可決されました。運動による県民世論の反映と考えます。

(8)新自由主義について

 9月27日、関県議が一般質問で新自由主義の認識を問うたのに対し、吉村知事は「世界各地の現状を見ますと、いわゆる新自由主義の影響によるとよらざるとを問わず、グローバル化や行き過ぎた市場主義から格差の拡大や環境問題等が生じてきたことは事実。SDGsに謳われている誰一人取り残さない社会の実現に向けて、知事就任以来一貫して掲げる心の通える暖かい県政の基本姿勢のもと、次世代に引き継ぐべきものはしっかりと守りながら新たな分野に挑戦にも果敢に取り組み、全力で県政運営を行う」と答弁しました。
 「行き過ぎた市場主義」という言葉は、新自由主義的政策を進めた齋藤前知事を破り、吉村知事が初当選をしたのちに策定した山形県総合発展計画に基本認識として盛り込まれていましたが、2020年に改定した計画には無くなっていたものです。
 関県議の質問でも明らかにしたように、コロナ禍で新自由主義政策の影響により格差と貧困が各分野で浮き彫りになる中、知事が「行き過ぎた市場主義」と答弁したことは大きな意味を持つものとして受け止めます。

(9)副知事人事について

 10月4日、副知事の選任についての議題が本会議に提案され総務常任委員会に付託されました。山形県議会では、人事案件は慣例で「人事案件、意見書案及び決議案は、委員会付託を省略するのを例とする」とされてきましたが、今回は付託となりました。議会運営委員会で慣例と扱わなかった理由について公表すべきです。
 定例会の最終日本会議で、副知事の選任について同意、副知事と特命補佐の役割分担を明確にし、特命補佐の職務内容を県政の透明化を図るとする「コロナ克服・経済再生特命補佐の職務内容の公表等を求める決議」に賛成しました。
 2月定例会で自民・公明党の否決で不在になっていた約半年間の副知事不在が解消されました。
 県政運営が円滑に進むよう望みます。

以上