2021 年12月定例会などについての見解

2021年12月27日

日本共産党山形県議団
団長 渡辺ゆり子
関 徹

 2021 年度 12 月補正予算が全会一致で可決・成立しました。日本共産党県議団は、補正予算を含 むすべての議案に賛成しました。県民に対する説明責任を果たす立場から見解を表明します。

(1)野川元県議による政務活動費不正問題について

i)11月に報道で発覚した元県議会議長・自民党会派所属の野川政文氏の政務活動費不正受給について、野川氏は11月15日の自ら行った記者会見で、月8万円の人件費を、被雇用者に「1万円」支払い、残り7万円を野川氏が「寄付の積もりで」受け取り、それを「政治資金として活用していた」「これまで受領した月8万円は全額返納させていただく」と弁明しました。
その後、議会事務局の調査によって事務所費への支出も不適切であったことが判明、12月21日、議会運営委員会で、2008~2021年度分の1575万円余り(うち人件費は1248万円、事務所費は約65万円、他一部前金支払い含む)を野川氏が返還することが報告されました。
公費の巨額返還であることともに、同氏が長年に渡って偽の領収書を提出し続けていたこと、政務活動費の点検の責任者である元議長職であること、議長在職中の2016年度に他議員の同様の不祥事に「告発」がなされなかったことなどの経緯もあり、県民の議会に対する信頼を大きく揺るがす事態となっています。

ii)11月8日、県議団は議長に対して、議会としての調査を申し入れましたが、その後、県議会からの調査報告は無く、県民に対しても説明責任が果たされていないことから、12月14日、議長に1現状報告と徹底糾明の態度表明、2100条委員会設置による徹底調査、3告発しないのが「総意」という議長発言の撤回と告発の検討、4全議員などの現地調査を申し入れました。
 しかし、議会では、15日の議会運営委員会で現状報告はなされたものの、100条委員会設置、告発の検討、現地調査などを行わず、野川氏の政治資金がどのように活用されたかについても明らになりませんでした。
 12月20日、議長名で「不正受給に関する詳細な説明について(申入れ)」が野川氏に出され、本人に詳細な説明を求めましたが、説明は本人の意思に任されている状態です。問題糾明のため100条委員会設置による調査を行うことが求められています。

iii)今回の事案非常に悪質であることから「告発すべき」との県民世論が広がり、市民オンブズマンからの要請も出されています。しかし、11月22日、議長は「県議会としての告発は法制度上できない。個人として可能だが、議長という立場でもあり、法令に従って行動する」とコメントが報道されました。
 県議団は、「2016年の不正事案で行われた私たち会派に対する告発の意向確認もせず、調査すら終わっていない段階で議長が結論を出すのは、議会がこの問題の糾明に消極的と見られかねない」として、議長に①徹底糾明する姿勢を示すこと。②兵庫県議会で議長・会派代表らが連名で告発した例も踏まえ、全会派協議で告発を検討することを申し入れました。しかし、議長はその後も「議会として法的にできない、個人的としても告発しない」という考えを重ねて表明しています。
 今定例会では、これほどの問題であるにも関わらず、少数会派が質疑できる場を作られることはありませんでした。
 野川氏の問題を契機に設置・開催された「政治倫理向上対策検討委員会」「政務活動費等検討委員会」(少数会派は委員会のメンバーでなく、さらに政活動費等検討委の一部が非公開で参加傍聴出来ず)は、この問題を取り扱わないとし、少数会派がオブザーバー参加できる議会運営委員会(12月21日の議会最終日)でも、渡辺ゆり子団長が100条委員会の設置などを求めた「12月14日の申し入れについての検討」について、発言を求めましたが「のちほど(会議終了後)、事務局が説明する」という対応で、その場で議論されることはありませんでした。
 議会運営委員会に先立って行われる自民・県政クラブによる会派協議会では、今回の問題について何らかの協議があるようですが、非公開協議であり、共産党県議団を含む少数会派は参加できず、会議結果は「連絡しない」とされています。全国でも例の無い仕組みです。
 少数会派が質疑させない仕組みは、問題の糾明を阻んでいます。
 これは、会派協議会に責任があるとともに、特に県議会の多数会派でもある自民党は、野川氏の所属していた会派、2016年に不正問題が起きた議員が所属していた会派、議長が所属するであり会派であり、重い責任があると言わざるを得ません。

iv)県民世論に押され前向きの変化もありました。政務活動費の制度については、政務活動費等検討委員会の審議を通して、活動費の領収書などをインターネット公開する方向となりました。これまで県議団が求めてきたものであり、一定の改善策です。政務調査費(現在:政務活動費)を巡り市民オンブズマンから食料費などについての裁判も続いており、県議団が提案してきた飲酒を伴う会費を対象外とする制度改善や分かり易い公開も必要です。
 また、野川氏の問題を契機に設置された「政治倫理向上対策検討委員会」では、議員研修会が政治倫理とともに様々な項目の研修が行われました。
 県議団は、今年4月に議長申し入れで「ジェンダー平等を議会の理念を据えるため」の研修の実施を求めてきましたが、今回の研修項目に、男女共同参画法のセクハラ等の禁止、ハラスメントの項目が盛り込まれました。わずかな時間でしたが貴重な前進です。

(2)2021年度12月補正予算について

 12月冒頭の補正予算、追加補正予算には、感染拡大の第6波に備えた県立病院等の医療機器等の整備、生活福祉資金の貸し付け延長、1月4日からの宿泊割引の冬割キャンペーン実施、米価下落対策、「ワクチン・検査パッケージ制度」の導入、夜間営業の飲食店等に対する飲食業等緊急支援給付金、県人事委員会勧告の基づく県職員のボーナス引き下げなどが計上されました。
 特に米価下落対策は、米農家の営農意欲の維持・継続に向け10aあたり1000円を支援するもので、9月に山形農民連の県要望で「1俵につき100円の支援を」などとの意見に応えたものとして、県の姿勢を評価するものです。
 同時に、下落影響額からみれば自治体の支援は限られたものとならざるを得ず、国の責任による抜本的な支援が強く求められます。
 (農水省の「令和3年産水稲の全国農業地域別・都道府県別10a当たり平年収量」で山形県は598kg。9月のJA全農山形は、「はえぬき」の概算金(1等米60kg)を昨年度比2200円の減としており、10a換算で約22,000円の減収。)
 国は、事実上の隔離効果があるとされる過剰在庫の長期保管などを行うと言いながら、一方で、「コメの転作支援である水田活用直接支払交付金」の見直しで、今後5年で一度も水張しない水田を交付の対象外とする方針を示したと報道されています(12月1日、日本農業新聞)。米価が暴落している時に営農意欲をそぐ国の方針に怒りを禁じ得ません。今定例会で、見直しへの見解を問われた農林水産部長は「①経営に大きな影響が出る②積雪寒冷地で不利③地域で話し合いが難航する」と語りました。当然の懸念だと考えます。
 国は、転作補助金の大幅拡充、農業者戸別所得補償制度の復活、ミニマム・アクセス米の輸入中止などでコメ農家を支援してくことこそが求められます。
 夜間営業の飲食店等に対する飲食業等緊急支援給付金は、昨年末に引き続き実施されます。令和3年10~12月のいずれかの売上げが前年同月比または前々年同月比で30%以上減少した事業者に1事業者あたり20万円の支援等をおこないます。対象業種が飲食店、運転代行者から、酒類卸売業、カラオケボックス業、洗濯業、労働者派遣業(芸妓・コンパニオン等)など広がりました。県議団も昨年、「労働者派遣業の方が対象にならない」などの声を受けて県に求めていたものであり、実施を評価します。
 飲食店はコロナ影響が長引いており、経営者からは年末の資金繰りの厳しさを訴える声が届いています。しかし、残念ながら、今回の飲食店給付金は、事務手続きのため申請受付が1月中旬頃と見込まれており、事業者の年末に間に合わないことが明らかになっています。県は今後の教訓にしてもらいたいと考えます。
 そもそも、事業者がこのような事態に陥っているのは、8月の第5波が第4波と比べて、大きかったことを見ても、政府の支出の規模が小さく、また小出し感が否めず、昨年度実施した持続化給付金や家賃支援も未だに実施されず、政府が新たに打ち出された「事業者復活支援金」も今年1月から10月の売り上げ減少が対象とならないなどなどによるものです。すべての中小業者の営業と暮らしを支える政治への転換が強く求められています。
 補正予算で県職員の賞与引き下げが予算計上されました。それに先立つ11月29日の臨時議会で、県職員の給与条例が改定されました。県議団は12月のボーナスを0.1引き下げる案に対し、①不利益遡及②コロナ禍でやりがいをそぐもの、③民間に波及し負のスパイラルになり、社会的に求められている労働者全体の賃上げに逆行する、などの点を指摘して反対しました。

(3)原油高騰対策について

 全市町村が豪雪地帯に指定されている本県にとっては、燃油高騰は暖房代を始めとして県民生活に直ちに影響を及ぼす重大問題です。
 県内の灯油店頭価格(円/18l)は1,886円と、昨年11月1,264円と比べ約1.5倍になっており(経済産業省「石油製品小売市況調査(都道府県別)」調べ11月15日現在)、他に削るところがない生活困窮者にとっては正に死活問題となっています。
 本県では、福祉灯油助成が吉村知事の英断で年度当初から実施されていますが、目下の原油高騰で「5000円では2缶少ししか買えない」といった声が拡がっています。
 コロナ禍、凍霜害・雹害、米価の暴落で苦しむ事業者・農家にも、燃油価格高騰が追い打ちをかけています。
 また、コロナ禍で換気の重要性が言われる中、福祉施設、医療施設、公私の教育施設でも暖房費の増加と燃油高騰の影響がいっそう懸念されます。加えて、公共交通機関が発達していない本県にとって車は生活必需品であり、ガソリンを始めとした燃油価格高騰は公共料金の引き上げに等しいものがあります。
 県民は、ガソリンを満タンにすることにも躊躇する状況となっていますが、節約は非常に困難です。近年、就労等のための車の保有が一部に認められてきている生活保護世帯にとっても深刻な状況です。
 県議団は、12月2日県に制度拡充を申し入れましたが、県は12月6日「(事前に行ったアンケートから)市町村からの回答結果を踏まえ、追加支援を行わない」と市町村に通知を出しました。
 しかし、市町村では、少なくとも4市2町(12月20日現在、日本共産党山形県委員会調べ)が県の補助金に上乗せ実施を表明しています。上乗せ額は2000円から5000円です。
 国は、原油高騰対策として2021年度3月分において特別地方交付税を措置するとしています。県は12月定例会では、計上しませんでしたが、県も市町村も連携し、切実な要望に応えるため努力し、引き続き検討を行うべきです。
 また、生活保護世帯がこの制度の対象とならない問題(課題)も切実です。ある生活保護受給者からは「家が古くて寒いので暖房費がかかり、ストーブを消せない。10月から灯油を買っている。高いと実感している。昔は冬季加算が1万円を超えていたのに、今は月8000円。非課税世帯に福祉灯油が出るのになぜ、生活保護には出ないのか」との意見が寄せられています。
 非課税世帯は対象としながら生活保護を外すのは、人権に関わる問題と考えます。
 国は、平成19年に「地方が実施する灯油購入助成について、収入認定しない」との方針を示していますが、一部の市町村で誤った理解が残っています。県として被保護者へも対象を拡充し、市町村にも改めて周知を図るべきです。

(4)再生可能エネルギー関連条例の設置について

 再生可能エネルギーの普及によって、原発廃止、地域振興を図る事に大きな意義があることは言うまでもありませんが、同時に、メガソーラーや大型風力発電が環境や健康に被害を及ぼす事例、計画が住民に不安を与える事例が全国に拡がっています。
 今議会で成立した「県再生可能エネルギーと地域の自然環境、歴史・文化的環境等との調和に関する条例」は、本県のエネルギー戦略策定後に現れた、飯豊町、大石田町でのメガソーラー、今年鶴岡市で発生した出羽三山での風力発電などの事業に対して住民から疑問が示され、反対世論も起こる状況に対応するものです。
 都道府県では5つ目、東北では初めての条例として重要な意義を持つものですが、規制対象となる発電事業の規模は前例より大きなものとなっており、洋上風力は「国の許可」として対象外になっています。
 もとより、地方自治体の条例による規制には限界があり、本条例の趣旨を徹底するためには、FIT法、地球温暖化対策推進法、森林法、土砂災害防止法等の関係法令・省令等の改正が求められます。また、環境影響評価手続きの運用の厳格化は規制の上で重要な課題であり、事業の分割によるアセスメント手続き回避等の行為に対する県の姿勢も問われます。

(5)常任委員会、特別委員会の質問について

i)常任委員会

 「厚生環境常任委員会」で関県議は以下の項目を取り上げました。

 ①新型コロナで新たに「確保」された病床の内30床は、酸素ステーションであり、「確保に向けて努力中」であることを明らかにしました。また、コロナ医療体制確保には、医師・看護師配置基準の抜本的拡充が必要であり、政府に強く求めるよう改めて提言しました。
 ②令和4年度の施策展開特別枠に挙げられている福祉事業所等の工賃向上対策について、生活支援サービス等の充実が図られなければならないこと、利用者・職員の労働強化ではなく支援の拡充で工賃向上が図られなければならないことを指摘しつつ、障がい者優先調達の拡大、共同受注のための組織づくり・商品開発・販路拡大等を提言しました。
 ③「沖縄戦戦没者の遺骨等を含む土砂を埋立に使用しないこと」についての請願の審査で、遺骨収集事業の推進が緊急・重大課題であること、遺骨が混じった土砂を埋め立てに使ってしまう事の誤りを主張、継続審査の主張の矛盾点も指摘して、今議会での採択を求めました。

「商工労働観光常任委員会」で渡辺県議は以下の項目を取り上げました。

・飲食関連事業者の家賃支援(9月補正)に関し、8割に及ぶ申請書不備への対応について、該当者に支援が届くような対応を求め確認しました。
・夜間営業の飲食関連事業者に対する緊急支援(12月補正)について、対象者を拡充したことを評価しつつ、年内の支援が届かないことを指摘。年末の相談体制強化を主張。
・若年女性の賃金向上推進事業について、申請状況をただし、来年度に向けて働く環境整備も含め充実強化を求めました。

ii)特別委員会


「経済活性化・雇用対策特別委員会」で関県議は以下の項目を取り上げました。

・有機農業を拡大していくための技術的支援の強化
・厚労省のユースエール事業を参考に、若年労働者が働き続けられる職場づくりを企業等に働きかけていくことと、就職を希望する若者への情報提供を拡充すること。を質問、これらが委員会の提言に盛り込まれるよう議員間討議で提起しました。


「健康医療・女性若者活躍対策特別委員会」で渡辺県議は以下の項目を取り上げました。

・委員会の調査で鶴岡市社会福祉協議会や地域包括支援センターからの聞き取り、医療福祉の連携強化など提言に反映させるよう発言した。


以上