2022年12月定例会などについての見解

2022年12月27日

日本共産党山形県議団
団長 渡辺ゆり子
関 徹

 2022年度12月定例会では、新型コロナ対策、物価高騰対策を重要テーマとする補正予算が全会一致で可決・成立しました。日本共産党県議団は、補正予算を含むすべての議案に賛成しました。憲法改正の議論を促進する議会発議の意見書1本に反対しました。県民に対する説明責任を果たす立場から見解を表明します。

(1)2022年度12月補正予算について

 原油価格・物価高騰が県民生活のあらゆる分野に広がる中で、9月定例会に続き、運送事業者の燃油価格高騰、バスやタクシー事業者対策、畜産農家の飼料価格高騰対策、中小企業・小規模事業者への緊急支援給付金の追加支援、政府補正対応の公共土木事業などが予算化されました。
 なかでも、病院や診療所などの医療機関への原油価格・物価高騰対策支援として、8億7800万円が計上されことは、関係者の切実な要望の実現として歓迎します。
この件については、渡辺県議が9月定例会厚生環境常任委員会で、医療機関や保育所等への支援を求める質問を行い、10月27日には、山形県民主医療機関連合会が「物価高騰に対する医療機関等への緊急支援要請書」を県に提出し、物価・光熱費高騰の影響の大きさ、診療報酬・調剤報酬が高騰分を補償していない実態を県に伝えました。共産党県議団も同席しました。
 今回の支援策は、これまで把握できた都道府県では額も大きく、医療機関の声にこたえる知事の姿勢を大いに評価したいと思います。
 また、補正予算には、統一協会が社会問題化する中、霊感商法を含む悪質商法に係る若年者のための消費者教育の実施(チラシや動画の作成による啓発)の予算100万円が計上されました。県内でも、共産党地方議員に、高額献金、合同結婚の末にDVに苦しむ女性の相談、「結婚相手が見つかる」などと入信させられ、高額献金させられた方などからの相談が寄せられています。県議団としても9月に、「統一協会と関係を持たない事」等と共に、「霊感商法や高額献金等の相談体制を充実させるとともに、消費者への普及啓発を強化すること」と県に要請し、9月定例会でも渡辺県議が一般質問で求めていました。大いに活用されることを求めていきます。

(2)来年度 部局別予算要求について

 12月定例会では2023年度予算要求が公表されました。新規事業として「山形県困難女性支援基本計画の策定」が掲載されました。継続事業として、コロナ禍で不安や悩みを抱える女性に対する相談機能強化やピアサポート(支え合い)、生理用品の無償提供など、女性に係わる事業がさまざま挙げられています。
県計画は2022年5月に成立した「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」によるものですが、法の目的には「人権が尊重され、及び女性が安心して、かつ、自立して暮らせる社会の実現に寄与すること」とされ、困難を抱える女性の人権の尊重が謳われています。
 女性相談支援員の常勤化・充実はもとより、生活困窮、性暴力・性犯罪被害、家庭関係破綻など複雑化・多様化・複合化する、差別や人権侵害の実態の調査と、ライフステージに合わせた支援策が求められます。例えば、妊娠・出産のために離職し、復職時に子育てや親の介護に直面し非正規にならざるを得ないケースや、親が発達障害などの障害を持ちながら(本人や家族が気づいていない場合も含む)で子育てするケース、高齢女性の低年金、生活保護の忌避感、80代女性の自殺が多いことなどです。
 学校給食では、新規に米粉パン製造技術の開発・検討や導入・定着のための普及啓発が計上され期待されます。県産小麦の品種開発促進も併せて進めるべきと考えます。
 県立高校へのスクールソーシャルワーカー(SSW)の派遣が新規に計上されました。これまで小中学校に対応するSSWは配置されていましたが、高校にはありませんでした。
 山形県の国公私立高等学校の不登校は、1000人当たり17.9人で全国多い方から23番目、中途退学者数は、360人で中途退学率1.3%(全国多い方から11番目)となっています。(文部科学省「令和3年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」より)
 生涯健康・子ども支援対策特別委員会で関県議は、通信制高校が、かつての「働きながら学ぶ」場所から、不登校や精神的・経済的問題等の困難を抱える生徒の受け皿に変化しているにもかかわらず、教職員体制が旧来のままとなっていることについて文科省も対応を検討していること、本県でも生徒への支援が困難となっており、教員配置の拡充とSSWなどの配置が必要であるということを指摘し、担当課長も「配置は課題となっている」と答弁。委員会からの提言にも盛り込まれる方向となっています。
 一方、予算要求には、水素エネルギー関連、DXデジタル、重層的支援体制、県水道広域化推進プランなど、岸田政権の問題を指摘される施策も反映されています。
 水素エネルギーに関しては、輸入する段階でCO2が大量に排出されるという問題、製造過程でCO2を排出する製造方式が現状では主流であるという問題があります。
 DX・デジタル推進については、政府が計画している窓口業務の縮小・削減、高齢者を始め取り残される人の発生などに警戒が必要です。
 重層的支援体制については、「地域への丸投げ」と批判される「地域共生社会」の懸念。「8050問題」や、介護と育児を同時に抱える「ダブルケア」などに対応するには、住民の助け合い任せではなく、公的支援とそれを担う人員体制を質量ともに充実させることが何よりも重要です。水道広域化推進プランでは、広域化への依存は災害への脆弱性が懸念されます。
 来年度予算に最も期待されることは、県民が新型コロナと物価高に苦しむ中で、県がいのちと暮らしを守る防波堤の役割を果たすために、医療・福祉・教育のいっそうの充実を図る事と考えます。

(3)山形県個人情報保護条例等の廃止と、法施行条例制定について

 自公政権は、2021年5月に成立させたデジタル関連法で、国や自治体が持つ膨大な個人情報のデータ利活用を成長戦略に位置づけ、企業の「儲けの種」にさせることを「デジタル改革」の名で進めようとしています。その関連法の一つである個人情報保護法の改定によって、山形県個人情報保護条例が廃止され、改定法施行条例が制定されました。議会の個人情報保護条例も制定されました。
 これまでの条例には、個人情報は「本人から収集しなければならない」((収集の制限)第5条)、「実施機関は、個人情報を…目的以外のために…利用し、又は当該実施機関以外のものに提供してはならない」「思想、信条及び信教に関する個人情報並びに社会的差別の原因となるおそれがある個人情報を収集してはならない」((利用及び提供の制限)第6条)と山形県独自の制限を課していました。
 しかし、政府は、自治体ごとの特徴ある規定が「データ流通の支障」になるとして「いったんリセット」(2021年3月19日平井大臣答弁)する法を成立させました。
 それによって県は、法で規定する以上の制限を設けられなくなり、本人収集の原則、目的外利用、提供、社会的差別のおそれがある思想信条の収集の制限を無くしました
その代わり法の「偽りその他不正の手段により個人情報を取得してはならない」(64条適正な取得)、「利用目的の達成に必要な範囲内で、保有個人情報が過去又は現在の事実と合致するよう努めなければならない」(65条正確性の確保)を用いるようですが、これまでの制限のように明文化されていません。
今回の個人情報保護法の改定は、個人情報保護を著しく後退させるものであり、かつ地方自治の侵害です。
一方で、新条例には、何人も違反の「是正の申出」ができる項目(10条)が設けられました。議会の個人情報保護条例でも、これまであいまいだった「個人情報取扱事務登録簿」の作成公表が明記されました。改正法の内容は容認しがたいものですが、県の裁量の余地が少ない中、独自の規定を設けていることから、両条例に賛成しました。
総務常任委員会の答弁で「従前の条例から保護の観点で大きな変わりはない」(12月16日山形新聞)と答弁しています。状況を注視していく必要があります。

(4)感染症や大規模災害等の緊急事態に対応できる国づくりに向けた議論を求める意見書について

 12月定例会の最終日、議会運営委員長発議で「感染症や大規模災害等の緊急事態に対応できる国づくりに向けた議論を求める意見書」が採択されました。共産党県議団は反対しました。
 関県議は討論で「意見書案は、新型コロナや大規模自然災害等の緊急事態に対応するための施策と法整備、憲法のあり方について、国会での議論、国民的議論喚起を求めるものだが、採択されれば、憲法に緊急事態条項を創設することの検討促進という意味を持つものとなる。(緊急事態条項創設は)極度の権力集中による政府の権力濫用、人権の制限など重大な危険性が指摘されている。新型コロナ対策では、現行法制度の下でなし得る努力をちゃんとおこなうことをこそ国民は期待している。大規模自然災害では、東日本大震災被災自治体首長の92%が緊急事態条項とは真逆の対応を求め、96%が「憲法が災害対策の障害にならなかった」としている。必要性が無い中で、憲法のあり方を議論せよという主張は、九条も含む憲法改正促進にしかならない」と述べて反対しました。
 賛成討論に立った自民党の渋間県議は「民主主義の反対は独裁。独裁とは議論することを忌み嫌う。発議は、議論を喚起・促進することを求める意見書であり、議論すらするなということは独裁につながる道」旨の発言をし、感染症や大規模災害対策に憲法のあり方の議論が必要かどうか説明することもなく、憲法のあり方の検討が有害無益であることから反対する意見を「独裁」などと誹謗する討論をおこないました。意見書発議案は、共産党以外の賛成で可決されました。
 今回の発議案は、新型コロナや大規模自然災害等の緊急事態にどのような施策と法整備が必要なのか、憲法のあり方にどう係わるかなどの説明が全くされておらず、県民の理解を得られる内容となっていません。
 なお、このような趣旨が不明瞭な案文は本来質疑が行われるべきですが、山形県議会(自民党が多数)では独自ルール(質疑は県政一般に関する質問と合わせて行うことを例とする)のため認められず、議会運営委員会でも委員外発言が認められることが稀で十分な議論ができない状況です。

(5)質問について

常任委員会

厚生環境常任委員会」で渡辺県議は以下の項目を取り上げました。

  • 補正予算に計上された病院や診療所などの医療機関への原油価格・物価高騰対策援について評価
  • コロナ発熱外来受け入れ病院に対する誹謗中傷について
  • 高齢者施設のコロナ検査について
  • コロナ対応生活福祉資金の免除実施状況について

商工労働観光常任委員会」で関県議は以下の項目を取り上げました。

  • 物品調達等に係る地元企業への受注向上について、出先機関の一部が地元調達システムの対象外となっていることについて 県は現在「物品の調達率」で95%だが100%に向け努力すると答弁。
  • 観光バス事業者の3年に1回の免許更新の際に、国交省が「3年連続赤字で、累積債務がある場合」、更新にハードルを設けている問題について。
  • 女性の正社員化・労働条件改善について、職場環境アドバイザーなど企業等を訪問してつかんでいる状況と教訓などについて。

(6)請願について

 山形市木の実町12-37 9条改憲NO!やまがた県民の会 共同代表 高木 紘一 外1名から
「世界平和統一家庭連合の解散命令を裁判所に請求することを国に求める意見書の提出について」の請願が提出されました。
 総務常任委員会で審査されましたが、継続審査となりました。委員会審査では、救済法が成立したことをもって継続とする意見が出たようです(共産党県議団は所属していない)。
 共産党県議団は、紹介議員となっていませんが、内容は正当なものとして採択すべきと考えます。

以上