2024年2月定例会などについての見解

2024年3月31日

日本共産党山形県議団

団長 関  徹

石川 渉

 2月20日から3月19日まで開かれた2024年2月定例会で、フルーツステーション関連予算を除いた当初予算が全会一致で可決されました。
 日本共産党県議団は、山形新幹線新トンネル整備基金設置条例を除くすべての議案に賛成しました。
 また、議会で海外視察(海外政策課題調査事業)を再開する意向が示されたことに対して、実施に反対する立場から、詳細を明らかにし、改めて是非を検討することを求めました。
 自民党県議団は代表質問で、「国防こそ最大の福祉」等と主張して知事に改憲への賛同を求めました。福祉よりも何よりも、軍事を優先するあからさまな軍国主義の主張が代表質問でおこなわれたことは極めて重大です。「日本の原発は世界一安全」「六ヶ所村核燃再処理施設竣工で放射性廃棄物処理の問題も解決した等と原発再稼働も主張しました。
 また、同会派が2月定例会に提出するとしていた「笑いで健康」条例は、今定例会提出は見送られました。県民の条例に対する反対の声、現下の自民党政治に対する怒りの声の反映です。

 以下、当初予算等全員賛成の議案については、その趣旨を述べる討論が認められていないため、県民に対する説明責任を果たす立場から見解を表明するものです。

(1)フルーツステーション関連予算について

 県は2年前の2月議会に提案・撤回したフルーツステーションを再提案しました。
 内容は、さくらんぼを核とする県産フルーツの情報発信のため、旬のフルーツや料理を味わえて宿泊もでき、最先端の農業体験もできる、イベントなどもおこなう施設を先導的施設として最上川総合公園(寒河江市)に整備、加えて、市町村が整備する各地の施設とのネットワークを構築し、フルーツツーリズムを掲げて県内外の誘客をめざすというもので、情報発信の目的は、詰まるところ県産果樹のブランド価値を高める事で生産者の所得向上を図り、後継者の確保にも繋げるというものです。
 整備費用は圧縮したものの、施設建設に18億8000万円、うち県費を8億4000万円投じ、建設後の維持委託料として年7000万円をかけるものとなっていました。
 予算案は農林水産常任委員会で自民党の反対で否決、県は再び議案を撤回して当該部分を削除して再提案、全会一致で可決されました。当初予算案否決は山形県議会史上初の事態でした。
 県は当初、自民党が本会議で修正案を提案し、それが過半数で可決されても、「再議」を求める事を想定していました。再議に附された場合、議案(自民党修正案)は3分の2の賛成が無ければ成立しないため、自公では2議席足りず、修正案は不成立・当局案成立という想定が県議団にも伝えられました。
 しかし、党県議団はこの事業について、最先端の農業体験やフルーツ・飲食提供など先導的施設の内容や実現可能性が不明瞭であること、市町村等が整備する施設の内容も不明瞭で整備の意向もほとんど出ていないこと、県自身が関係者の知恵を集めて令和3年3月に策定した県果樹農業振興計画にも言及が無いことなどから、施設整備費の県負担8億4千万円、維持管理費毎年7千万円という費用に比した効果が不明確な事業と考えました。
 加えて、再議という手段が議会の過半数議決の原則を揺るがすものであって、このような案件で採用されることは不適切であることも併せて、農林水産常任委員会での議案否決後に見解を県に知らせ、議案を撤回するよう促しました。県はこうした中で、議案を撤回したものです。フルーツステーションは一旦白紙となりました。
 党県議団は吉村県政に対して、県民の命と暮らしを守る施策は評価し、問題がある場合は指摘し、場合によっては議案に反対もする、是々非々の対応を取ってきました。今回、その姿勢が事業に待ったをかける事になりました。
 近年果樹農家は、豪雪による枝折れや凍霜害などで廃棄や品質低下、鳥獣・病害虫被害等に加え、農薬・肥料・資機材等の高騰等々、経営が大きく圧迫される状況が続いています。
 そうした中でフルーツステーションに対しては、整備を望む声は聞かれず、「お金があるなら、物価高騰対策、後継者対策に直接使ってほしい」という声が寄せられています。
 効果的な情報発信によって県産フルーツのブランド価値を高める事は大事なことですが、果樹農業振興のために最も重要な事は、県自身がまとめた「果樹農業振興計画」に謳われているように、生産基盤強化、多様な担い手の育成・確保、異常気象等様々なリスクへの対応等々、生産者を直接支援する取り組みと考えます。

(2)山形新幹線新トンネル整備基金設置に反対討論

 3月15日、関徹県議が同議案に反対討論を行いました。その要旨は以下の通りです。

基金は、仮称米沢トンネル整備に向けて造成し、2024年度に5億円を積み立てるというもので、2024年度から6年程度、30億円程度までの積立が想定されています。整備の効果は、豪雨、豪雪などによる運休・遅延などを減らす事と、10分間のスピードアップといいます。しかしトンネルの構想には何点か疑問があります。
 1つは、運休・遅延対策について。安全・安定運行が重要な課題であることは言うまでもありませんが、豪雨、豪雪、動物等の対策は、トンネルほどの効果は無いにしろ、よりコストの低い方法がないのか代案が検討されるべきです。
 また、トンネル整備はもし実現する場合でも最短で7年程度、実際にはいつ始まるか、始まらないのか見通しがありません。速やかに実施できる安全・安定対策が検討されなければなりません。羽越線の運休・遅延対策も強く求めたい。
 2つ目に、費用便益、いわゆる費用対効果が示されていないということです。鉄道のみならず公共事業全般について、国が費用便益1に満たない事業に財政支出をおこなう事は想定されない中、この事業がそれだけの費用便益を満たすという説明はありません。
 3つ目に財政負担の問題です。整備費用1,500億円に対して、国は一部でも負担するとは言っておらず、当然、本県とJRとの負担割合も不明です。例えば、本県が費用の3分の1を負担するとした場合でも500億円と言う巨額に及びます。
 厳しい財政状況によって、暮らし関連を始めとする県民の切実なニーズに十分対応できない中では、効果不明瞭で多額の投資を要する事業より、切実ニーズに応えるために全力を挙げるべきと考えます。
 以上のように、代案の検討無く、費用便益にも目をつむったままで、実現の見通しがない現段階で、「政府にやる気を見せる」などとして、基金を積むというやり方は、合理性を欠くと言わざるを得ません。主に以上の3点から、本条例案には賛同し兼ねるものです。

 以上を述べて議案に反対しました。県政クラブ木村代表が賛成討論をおこない、議案は共産党以外全員の賛成で可決しました。

(3)自民党県議団提出の動き「笑いで健康条例」について

 2024年1月、県議会自民党会派が、「山形県笑いで健康づくり推進条例」(案)を公表し、県民から意見募集をおこなった上で、2月定例会での制定をめざすという考えを表明していましたが今議会には提出されませんでした。条例案に対する県民の批判の反映と考えます。
 条例案は、県民に「1日1回は声を出して笑う等、笑いによる心身の健康づくりに取り組むよう努める」と、笑うことを努力義務として課しています。県には「笑いによる心身の健康づくりに関する意識の啓発に努める」と、県民には意識の変容に取り組む事を求めています。
 笑いが暮らしと人生に幸福感をもたらすものの一つであり、健康の維持・増進にも資する事は、社会に一定の共通認識があり、笑顔で暮らせる社会をつくっていく事は、多くの県民の願いであると考えます。
 しかしながら、いかなる理由であれ、笑うことについて行政が県民に義務を課すような事があってはなりません。
 条例案が別の項目で「個人の意思の尊重」を記載し、発案者自身も努力義務を打ち消す必要があるという認識を示してしているように、努力義務規定は軽視できない問題です。
 北海道では「道民笑いの日」を制定していますが、「要領」に拠るもので、主な活動は、講演会の開催や健康づくりの普及・啓発活動等にとどまっています。
 仮に笑いの推進についての取り組みをおこなうとした場合でも普及・啓発の範囲のものにとどめるべきであって、行政の責務は、誰もが生きやすい社会をつくることで、自然に笑顔が生まれる条件を広げる事であると考えます。
 なお、笑いの日として定めるという8月8日とその日を含む8日間は、長崎原爆投下の日、終戦記念日を含んでおり、日程設定も好ましくありません。
 既にこの件について、県民から「笑いを条例にするのはおかしい」「期間が8月上旬、長崎、広島のことも含めて、おかしい」「感情、精神的なものを、そこまで条例にするのはおかしい」「あえてする必要ない」など多数の意見が届いています。

(4)海外政策課題調査事業の再開について

 海外政策課題調査事業、いわゆる「海外視察」について県議会2大会派間で再開の動きがあることから、3月19日、議長あてに申し入れをおこないました。県議団はもとよりこの事業に反対ですが、県民に詳細を明らかにし、改めて是非を検討することを求めました。
 海外視察は、2011年以降、県民からの批判や経費縮減もあり、自粛が続いていました。2018年、2大会派間で議員一人当たりの費用を100万円から80万円に縮減するなど決定。以降、予算に政策提言充実強化費として800万円計上されていますが、使われることなく終わっています。
 物価上昇に賃金も年金も追いつかず、インボイスという新たな増税も開始。内閣府の調査でも「現在の社会で満足していない点」について、「経済的ゆとりと見通しが持てない」という回答が過去最高となる中、県民の理解を得るのは難しいと考えます。

(5)2024年度当初予算について

① 吉村知事は来年1月に任期満了のため、任期中最後の予算編成となりました。

 40年来で最大といわれる物価高、県内の人口流出による人手不足、年金の目減り、後期高齢者医療費は値上げという状況、また国が不十分ながらも「こどもまんなか社会」を打ち出し子育て支援強化を打ち上げる中で、県がどのように県民の暮らしを守る姿勢を打ち出すか注目されました。
 県議団は予算編成に先立つ、1月30日、吉村知事に「賃金向上支援策の拡充」「国保の子どもの均等割り撤廃」「給食費無償化」「能登半島地震を踏まえた減災・防災対策」を重点要望とする、「2024年度 県政運営に関する提案・要望」を提出しましたが、防災・減災を除いて重点項目は盛り込まれませんでした。(防災・減災対策については、「津波避難路への停電対応型夜間照明の新設・改修支援」「地震による家屋倒壊から命を守る住宅改修支援」などの予算が付きました)。
 昨年度、提案した熱中症対策についても、熱中症予防の注意喚起・指定暑熱避難施設等にとどまり、低所得者等に対するエアコンの電気代補助は予算化されませんでした。命と健康を守る重要課題として本格的な取り組みが求められています。
 当初予算全体は、子育て、医療、福祉等で大きな施策展開はなく、不十分なところもあるものの、これまで県議団が取り上げた県民の要望に応えた事業が打ち出されています。(後述②)
 また、女性の雇用改善、生理用品無償提供、0~2歳児保育料軽減、少人数学級、私学授業料軽減補助、学童保育料軽減、福祉灯油、住宅リフォーム助成等々、県民の暮らしを守るための事業は継続となりました。物価高騰など鑑みさらなる拡充が求められます。
 一方、山形新幹線新トンネルについて5億円の基金を積立てることや、フルーツステーション整備は、過去の開発偏重型の県政をも想起させるものです。教育現場へ学力向上対策の圧力を強める事は、今でもいじめ・不登校・自殺までもたらしている子どものストレスを一層増大させるものであり、子どもの権利保障に逆行するものです。いずれも、県政の基本姿勢に関わる重大な問題と認識しています。
 以上のような点を総合的に判断して、予算全体として賛成しました。
 知事は予算内示会後の記者会見で、記者から満足いく内容かと問われ、「本当にもっと財源があれば、保育料無償化は完全にやりたいですし、できれば教育費無償化はやりたいですし、 やりたいことは山ほどあります」と発言しました。「県民の命と暮らし最優先」の基本姿勢が継続・発展することが強く求められています。

② 県議団が一般質問、予算委員会など各委員会で主張してきた内容が各種予算化されました。

低所得のひとり親世帯への県産米の提供

 一般財源で4000万円が組まれました。2022年度はコロナ対策として計上され歓迎されましたが2023年度は実施されませんでした。物価高騰の中でひとり親家庭支援センターに「今年はおこなわないのか」と問い合わせが相次いでいました。12月定例会の予算委員会質問で石川議員が実施を求めていました。

「育休代替保育士の配置支援等による保育人材確保の推進」2900万円。

 4,5歳児の保育士の国の配置基準が76年ぶりに改善されました。全国的な世論の盛り上がりの中で山形県内でも改善を求める運動が取り組まれ、本県では全国と比べて多くの署名が集められています。県議団は県独自で配置拡充をおこなうことを繰り返し求めてきました。女性の多い職場である保育士の産休・育休中の代替職員の問題は深刻です。本来、慶事である妊娠・出産が、保育士不足で替わりの職員が補充されず、残された職員に過重な負担を生じさせることは珍しくありません。妊娠順番制が暗黙の了解となっているという報道すらあります。今回の事業の効果は限られた範囲にとどまりますが保育施設への支援となると考えます。人員配置基準の改善と県独自の配置拡充策が求められています。

困難女性支援推進事業

 「困難な問題を抱える女性への支援に関する法律」が2024年4月1日から施行されます。売春防止法「保護更生」から、「女性の福祉」「人権の尊重、擁護」に理念が変わります。金谷寮の名称も「女性自立支援施設」に変更されます。県議団が求めている女性相談支援員の常勤化には至りませんでした。

私学への障がい児受け入れ支援

 2023年度までは障がい児2人以上を受け入れる園に対して県単で392,000円の支援がおこなわれていましたが、2024年度から一人以上受け入れる園に784,000円の支援になります。80カ所を見込んでいます。

看護職員修学資金の貸付対象者が新規貸与者枠80名が100名に広がります。

 2014年に庄内の看護師不足対策を求める2万人の署名が県に寄せられ、2015年に関県議が質問、2016年に実現した事業です。2022年度まで640名に貸与、408名貸与終了、内310名が県内医療機関勤務と成果を上げてきました。しかし、2020年策定の看護師需給推計では2025年時点で需要数17,412人に対して644人の不足が見込まれています。(厚生常任委員会関質問への答弁)
 看護師確保対策の更なる強化が必要ですが、国による処遇改善が強く求められます。

スクールサポートスタッフの拡充

 これまで、小学校69校、中学校43校、特別支援学校12校の124人配置を324人に増やします。国で全校分の予算が付いたため、県でも同様の措置を行います。教頭をサポートする職員配置もおこなわれます。業務負担の軽減につながるものではありますが、根本的解決には業務削減と抜本的な教員増が求められます。

スクールカウンセラーの拡充

 全中学校94校に1人、2人を配置し、中学校区内の小学校も担当します。児童・生徒の心のケアに専門能力を発揮し、不登校やいじめなどの問題への対応にも活躍する重要な職種ですが、勤務形態は年210時間で非常勤であり、常勤化が必要です。

校内教育支援センター設置

 不登校、別室登校の多い小学校25校に設置予定です。配置する人は教員免許を問いわず、1日6時間、35週を予定しています。これまで県議団として求めてきたもので、限られた人員ではありますが児童への支援として有意義です。同時に、フリースクール等の支援や教育支援センターの充実など、学校に行けない・行かない児童・生徒への支援策も強く求められます。

やまがた有機の里づくり支援事業費

 有機農業の担い手確保・育成に向けた栽培技術や販売戦略に係る研修を実施予定です。県農民連等から長年提起され、県議団も繰り返し取り上げてきました。国が「みどり戦略」を打ち出したものの、有効な対策を示さない中で、県独自の努力は重要です。

伝統工芸品等産業への支援の拡充

 伝統工芸品等産業新規従事者確保対策事業として、今年度は全国の美術大学生などを対象に県内の伝統工芸産業への就業体験をしてもらい就業につなげるプログラムを実施していました。来年度は、従前の事業に加え、新規就業した方に奨励金として月10万円を最大3年間支給する事業をおこないます。この事業に関して、後継者の育成に悩む伝統工芸品製作者から「伝統・文化を引き継ぎたいが人件費を出すほど売り上げがなく、弟子には別のところでアルバイトをしてもらっている。集中して学んでもらうために支援があるとありがたい」との声を受け、常任委員会で質問をしていました。来年度は10人分の予算を確保し実施します。

③その他

ヤングケアラー支援のための専門コーディネーター配置

子どもまんなか山形

 県は、こどもまんなか会議を設置、子ども若者パブリックコメントや子ども意見箱設置等、「来年度子ども計画策定年度にも当たっているので工夫して行う」としています(厚生環境常任委員会)。発端となった子ども基本法と子ども家庭庁設置法は、子どもの権利条約と国連子どもの権利委員会の勧告に真摯に向き合わず、G7中最悪の自殺、いじめ、不登校等をもたらしているこれまでの施策の検証や反省を示しませんでした。加えて、子どもの権利を担保する「子どもコミッショナー」等の第三者による評価機関も作らず、基本理念に「子どもの・・養育は家庭が基本」と明記する等大きな問題のある法律です。教育の分野も含めて不十分ながら法律に盛り込まれた権利条約の4原則(子どもの生命・発達に関する権利、最善の利益、意見の表明・尊重、差別禁止)を可能な限り具体化する努力が極めて重要です。

期末勤勉手当について

年間4.35ヶ月から4.45カ月となります。会計年度職員も同様です。

有機エレクトロニクス関連事業

 有機エレクトロニクス関連事業再編されました。これまで共同研究を行う企業の施設の5000万円の賃借料を負担していましたが、一定事業が進んだものとし、企業に負担を求めることになりました。

④ 懸念する事業

学力テスト対策の更なる強化への懸念

○「教科担任マイスターの育成研修及び学力上位県への視察」「学力向上に資するための学力上位県への教員の派遣」(新規)。8人の「マイスター」を代表として3つの県に1週間派遣し、小学校教員1人を1年間学力上位県に派遣する方針です。県教育委員会の学力テスト対策の更なる強化は教育現場への圧力を高め、子どもたちへのストレスを増大させることが強く懸念されます。

介護保険事業が昨年度比で減額

○介護保険事業が昨年度比で減額となりました。第9期介護保険料県平均(1号)が制度発足以来、初めて減額となりました。減少要因として市町村の基金の取り崩しをすすめたことがあげられます。県議団も主張してきました。一方で、国はこの間、要支援を給付から切り離して総合支援事業とする、要介護2以下を特養施設入所対象から外す、利用料引上げ等々、「保険料あって介護無し」の制度改悪が進んでいます。県として実態を把握し必要な介護サービスを保障する制度を目指すべきです。

将来的には国民健康保険税の大幅上昇が懸念

○国民健康保険は、2018年から都道府県単位化され、国は医療水準に合わせて保険税率を引き上げさせる役割などを都道府県に負わせました。将来的には保険税の大幅上昇が懸念される保険税統一が狙われています。
 来年度県は、今後6年間の「第2期 山形県国民健康保険運営方針」で、当面の間「納付金ベースの統一」を目指し、「税率の完全統一」は将来的な検討課題とすると定めました。納付金の統一は、保険税統一ほどではないものの、結果的に一部の市町村で保険税の上昇が予想されます。県は激変緩和策を講じるとしますが、原資が保険税では意味がありません。「取りすぎた」保険税が県の基金に積み上っていますが、ため込まず市町村に返し、できる限り保険税引き下げを図るべきです。抜本的な引き下げには国の負担を増やし、高い国保税を引き下げるべきです。

水素利活用推進事業費を計上

○水素利活用推進事業費が昨年度に続き一般財源で計上されました。事業の大半は水素ステーション整備補助金が占めます。同事業は2023年度の事業実績がゼロで全額減額補正となりましたが、県は「水素ビジョン」を作り、県内2030年度頃までに県内4地域での水素ステーションの整備(4か所程度)目指す見込みです。ステーションは全国164カ所ですが、東北では青森・岩手・秋田・山形はゼロと進んでいません。水素エネルギー活用は、製造・輸送・貯蔵で多くの課題が指摘されています。エネルギー源として利用可能な水素は存在せず、二次エネルギーです。いま進めるべきなのかの懸念が払しょくできません。

私学助成拡充なし

○私立高等学校等授業料軽減補助の拡充はありませんでした。拡充が求められます。

(6) 常任委員会質問について

石川議員は商工労働観光常任委員会で以下の点を取り上げました。

女性の賃金向上推進事業

 県内女性の賃金は全国最下位(令和4年)であり、賃金向上策の規模を拡大することが求められている。県はこの間予算規模を若干拡大してきているが、事業内容を変更し1件あたりの支援金額を増やしたため全体の件数が減ったので、予算を抜本的に増やし賃金向上推進事業の規模を拡大するように求めました。

やまがたスマイル企業認定事業

 「ワークライフバランス」「女性活躍推進」に取り組んでいる企業を認定する制度で昨年11月から受付が始まりました。質問時の2月1日時点で162企業が認定されています。(年度末までに221企業が認定されました)。順調に認定企業が増え取り組みを進める企業がひろがっていることを確認しました。さらに国の制度「エルボシ」「くるみん」認定企業へのグレードアップにつながるように国との連携を求めました。

暖冬・小雪で困っている事業者への対策

 今冬の小雪で除排雪をおこなう業者や関連業種、観光業に減収などの影響が出ています。県が相談窓口を開設したことを評価し、今後も親身になった相談対応や必要な融資が受けられるように援助していくことなどを求めました。

XR(クロスリアリティ)ビジネス創出事業

 現実空間と仮想空間を融合させ新しい体験を創造するXR技術の開発・普及は本県産業の発展に寄与する可能性があります。県ではこの技術を若者や女性の就業に結び付けていくための取り組みをすすめています。事業内容として産学連携で高校生や学生の技術習得や起業の促進につながる事業となっていることなどを確認しました。

伝統工芸品等産業新規従事者確保対策事業 

当初予算④に記述

山形版ふるさと観光検定事業

 ネットで展開されていた標記事業が今年度で終了するため、今後の展開について質問しました。検定参加者は年を追うごとに増え、2022年度は3万人以上が検定に参加しました。来年度は事業をおこないませんが、「過去問」など蓄積したデータをホームページに掲載し、山形についての知識習得を通じて観光に出かけるきっかけとなるように財産を活用すると答弁がありました。

やまがた就職促進奨学金返還支援事業

 奨学金の返済が若者に重しとなり、結婚・出産をためらう原因のひとつとなっています。奨学金返還支援事業は県内企業への就職増加と奨学金の負担軽減をセットでおこなう事業であり、必要としている人に届くように周知しさらに事業を拡大するように求めました。また制度上、申し込み年度の分からしか返還支援が受けられない(3年生の時に申し込むと、3年4年で受けた奨学金しか返還支援の対象にならない)ことになっていることや公務員が支援対象から外れることの原因を問うたところ、国の補助金が原資であるためとの答弁があり、県で独自に支援するなどさらなる支援拡大を求めました。

労働委員会の出前講座の実績と今後の取り組み

 労働委員会でおこなっている出前講座は学生や社会人になったばかりの方に、労働法などのワークルールを身につけてもらい、より働きやすい環境をつくっていくために重要な取り組みです。今年度後半に実施回数が大幅に増え過去最多となったので、開催に向けての努力や参加者の感想などを聞きました。「労働契約について理解できた」などの感想があるとの答弁があり、今後もさらにひろげてほしいと要望しました。

障がい者就業支援事業

 障がい者雇用について、来年度から2年ごとに法定雇用率があがることについて現状や対応を質問しました。県は今年度から障がい者雇用企業へ奨励金支給事業をつくっています。また認定企業制度もあります。どちらも実績が少ないため、さらなる周知・活用拡大などをおこない誰もが働きやすい職場づくりを進めるように求めました。

関議員は厚生環境常任委員会で以下を取り上げました。

子どもまんなか山形推進事業費

 子ども基本法で初めて掲げられた、「子どもの意見反映」の理念を確認し、広く子どもの意見を聞く取り組み、意見の反映・フィードバックを進める子どもコミッショナーの導入などを求めました。
 課長は、子ども家庭庁で策定する自治体職員向けガイドラインを参考にして理念を具体化していく。反映とフィードバックは特に重要であり、その状況は公表していくなど答弁がありました。

児童養護施設

 施設の子どもと家族のニーズは20年余りの間で大変深刻化したとして、県の支援策の成果を問いました。課長は、家賃や生活費貸与事業でこれまで47件の利用があると答弁がありました。
 現在、措置費でおこなわれている学校の部活動への費用支援が、地域スポーツクラブ等に移行すると対象にならないという問題を取り上げ、国に意見を上げ、県として支援することを求めました。

 課長は、国の見解を求めると共に、県の支援を検討していく必要があると答弁がありました。

社会的療育推進計画2024年度中

 子どもの意見表明を保障するため、独立組織、専門性のある職員の配置を求めました。
 課長は、子どもが直接意見表明するのが難しい場合に第三者が支援する仕組みを活用し、専門性のある支援員の配置を考えると答弁がありました。

看護師養成・確保対策

 修学資金枠が拡大(80から100人へ)した事を評価し、男性と社会人の志望者を増やすために、中学・高校への情報提供、社会人受け入れのための情報把握と経済的支援策などを求めました。
 地域医療支援課長は、養成校の男性入学は2023年度17名。3年課程全生徒数694名の内、101名、14.6%。看護職員における男性の割合は2022年11月現在で1166名、7.4%、前回の2020年11月現在の1,111名、7.1%に対して55名増加。説明会・体験セミナー・出前授業で、男子生徒も含めて県内養成施設の魅力を伝えているが意見を貰った点を検討したいと答弁がありました。

孤独孤立対策推進法とひきこもり支援

 孤独孤立対策推進法でひきこもり支援は重要な対策と確認されている。支援の量と質の確保をもとめました。
 地域福祉課長は、自立支援センター巣立ちや各保健所の事業、産業労働部の就労支援などを紹介、支援のノウハウのあるNPOなどと連携しながら進めたいと答弁がありました。

(7)請願について

 2月定例会では、市民連合やまがた(代表 菊地 若奈)から「ガザ地区での即時停戦を求める意見書の提出について」を求める請願が提出されました。共産党は趣旨に賛同していましたが団体からの紹介議員の要請がなかったため紹介議員となれませんでした。審査された総務常任委員会(共産党県議団は所属していない)では、自民党議員が「引き金はハマスによるテロ行為」「根拠としているUNRWAの統計は信用できない」等と主張したため継続審査となりました。

以上