2021年6月定例会などについての見解

2021年7月9日
日本共産党山形県議団
団長 渡辺ゆり子
関 徹

 2021年度6月補正予算が全会一致で可決・成立しました。日本共産党県議団は、補正予算を含むすべての議案に賛成しました。県民に対する説明責任を果たす立場から見解を表明します。
 今定例会でも、新型コロナ対策は最重要テーマでした。コロナ感染症で亡くなられた方々にお悔やみ申し上げますと共に、罹患された方々にお見舞い申し上げます。
 また、感染拡大防止と感染者支援に当たられた皆さまには、敬意を表し感謝を申し上げます。
 定例会では、オスプレイ山形空港着陸と日米地位協定見直し、男女共同参画の推進・ジェンダー平等、東京オリンピック中止などの重要課題について、共産党県議団が県民要求実現の政策を提起して論戦を展開する役割を果たしました。

(1)2021年度6月補正予算について

 県2021年度6月補正予算には、4月に共産党県議団も要望していた、学生・女性・ひとり親など生活困窮者世帯への支援として、県産米、生理用品、日用品支給などが盛り込まれました。
 県内の学生はコロナ禍のもと「アルバイトのシフトが減った」「働いていたお店がつぶれた」などの理由で生活に困窮しており、昨年度、県が学生に実施した支援米支給に対して「もう一度実施してほしい」という声が寄せられていました。
 県の事業は、高等教育機関の学生(県内・県外)に一人当たり5kgで、3万3000人分、16万5000kg、生活困窮者に1世帯当たり20kgで3,677世帯、7万3540kgを見込んでいます。
 コロナ禍で、コメの在庫が積み上がり、米価下落の懸念が広がるなか、農業支援策としても意義ある対策と考えます。
 「不安を抱える女性に対する支援体制強化」として、相談機能の強化やNPO等との連携で生理用品の無償提供を予定しています。コロナ禍で女性の貧困がクローズアップされる中、新日本婦人の会からも県に「必要な時に誰でも手に入るように」との要望が出されていました。この課題は、予算特別委員会で渡辺県議が取り上げました。
 商工分野のコロナ対策として、「県内事業者に対する事業継続応援給付金」が実施されます。法人20万円、個人事業主10万円が補助されます。かつてない消費の減退に喘ぐ事業者を応援するものです。財源は国から38億円交付される「地方創生臨時交付金」です。一方で、財源の制約から「今年4~6月の売上げが前年(前々年)同月比で50%以上の減少」という要件が課せられています。山形県商工団体連合会から「50%以上減ったらやっていない」「要件が厳しすぎる」という声が出ています。国は交付金の追加と、持続化給付金の再支給を実施すべきです。
 飲食店などでクラスターが発生したことを踏まえ、県議団としても4月に求めた「認証制度」が開始されていますが、調査件数の増のため、現地調査人員増の補正予算を計上しました。設備改善等の助成制度拡充と併せて、「公衆衛生の向上及び増進」策として推進していくことが求められます。

(2)予算特別委員会、常任委員会、特別委員会の質問について

i)予算特別委員会(6月23日)で渡辺県議は以下の項目を取り上げました。

  1. 米軍オスプレイの山形空港緊急着陸について
  2. 米軍オスプレイの山形空港に緊急着陸した事案の知事の所感について
  3. 新型コロナ禍で不安を抱える女性に対する支援について
  4. 山形県の男女共同参画推進について
  5. 教員の働き方改革について
  6. 少人数学級の推進について

ii)常任委員会

「厚生環境常任委員会」で関県議は以下の項目を取り上げました。

  • オリ・パラ開催によるコロナウイルス感染症への影響、オリ・パラ中止を求めるべき
  • 障害者施設従事者、在宅介護従事者へのワクチンの優先接種を
  • 県立病院エクモの追加導入に伴う、医療従事者の適正な労働環境


「商工労働観光常任委員会」で渡辺県議は以下の項目を取り上げました。

  • オリ・パラ開催によるホストタウンの状況について、今は命が優先。
  • コロナ離職者応援事業、今年度も実施を

iii)特別委員会

「経済活性化・雇用対策特別委員会」で関県議は以下の項目を取り上げました。

  • ネオニコチノイド不使用の稲作推進のために、米色彩選別機の支援を
  • 農業の自然災害被害支援として加工施設整備支援・既存施設利用への支援を
  • 健康医療・女性若者活躍対策特別委員会」で渡辺県議は以下の項目を取り上げました。
  • 医療従事者の増員・処遇改善、在宅医療・医療と介護の連携について

(3)米軍オスプレイの山形空港緊急着陸と日米地位協定見直しについて

 6月14日米軍オスプレイ2機が山形空港に緊急着陸、翌日、共産党県議団は県委員会とともに県に「米軍オスプレイが山形空港に事前通告なしに着陸したことに関する申し入れ」を行いました。
 予算特別委員会では渡辺県議が県の認識を問いました。
 かねてからオスプレイは、事故率が高く、墜落事故を繰り返してきた危険な輸送機であること、山形県上空に3つ訓練ルート(グーリーン・ピンク・ブルールート)が設定されていることの危険性が指摘されてきました。県議団は2012年8月山形県革新懇話会とともに県に対し「山形県上空での危険な飛行訓練を認めず、政府に撤回を求めること」と要望していました。今回、その危険性が現実なものとなってしまいました。
 知事は「飛行中の機体にトラブルが発生することは一歩間違えば命に関わる重大な事故につながりかねず、多くの県民の皆様に不安を与えるもの」「飛行訓練の状況、不具合の箇所や原因、修繕に要する期間など県民の皆様の不安を払拭するには足りない。引き続き予防着陸の原因究明、再発防止などを求める」「県民の皆様の命と財産を守る立場としてオスプレイの運用に限らず、在日米軍に関わる諸問題の解決に向けて今後とも全国知事会を通して政府に対し責任ある対応を求めたい」と答弁しました。
 また、全国知事会が、昨年11月、「日米地位協定を抜本的に見直し、米軍機の飛行について最低安全高度を定める航空法令や航空機騒音の環境基準を定める関係法令など、国内法を原則として米軍に適用させることや事件、事故時の自治体職員の迅速かつ円滑な立入の保障などを明記すること」を国に提言していますが、山形県もその立場にあることが確認される重要な答弁となりました。
 全国的にも注目される重要な問題が本県で発生した訳ですが、この問題について質問で取り上げた会派・議員は他にありませんでした。

(4)東京オリンピック2020開催に関して

 関県議は、厚生環境常任員会で、スポーツ振興・地域活性化推進課長の出席を求め、県内のホストタウンは、東北で最大の14だったが、現在4に減少し、応援ツアーは10市町から2市町に、パブリックビューイングの実施は7市から2市に縮小している状況を質疑で明らかにしました。
 続いて、政府の水際対策・「バブル方式」などの破綻を指摘、政府に提出された「専門家の提言」を紹介しながら、医療統括監にオリ・パラ開催のリスクについての認識を問いました。医療統括監は去年の夏の状況やこれまでの県内での感染拡大を振り返り、もう一つ懸念される変異株デルタ株の状況踏まえて、主会場となる東京都、千葉埼玉神奈川の感染、リバウンドする状況があった場合、それからデルタ株が東京でも半数を超える状況になっているが、西浦(京大)教授が『オリンピックの頃には9割を超えるのではないか』と予測。そうしたことが現実になって東京都がリバウンドした中でオリンピックを迎えれば、そこに観客として山形からも人の動きが大きくなったりすれば、その1、2週間後に山形県も非常に危なっかしい状況になることが容易に予想がつく。デルタ株は501,α株と比べても伝わり方が1.32倍、従来株の1.9倍、伝わり方。置き換わっていく。そういう状況を見ると人の動きが全国的にオリンピックを契機に、県境を越えて活発になるということは感染者が多くなる非常に危険な状況。そうならないためには、6月18日の専門家提言、その中でも1都3県中心にリバウンドの予兆が見られた場合は、抑える対策を早めにやらないと、そうしないで開催すると非常にリスクが高い。オリンピックでそういう状況があった場合1,2週間後、パラリンピックの頃非常に危ない。そうならないように対策を講じなければと強い危機感をにじませた答弁を行いました。
 一方、同常任委会では「オリ・パラ開催にあたりコロナ対策の徹底を求める意見書」として、開催を前提とした意見書が提案されましたが、関県議が「反対」を表明したことから、委員会からの意見書発議は見送られることになりました。
 しかし、議会最終日に同趣旨の「新型コロナウイルス感染防止対策等を徹底し東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の成功を求める意見書」が議員発議され本会議に上程されたため、関県議が反対討論に立ち、厚生環境常任員会での医療統括監答弁も紹介しながら、重大なリスクが発生することを指摘、政治の最大の使命は、命と暮らしを守ることであり、中止を求めることこそが議会の責務と主張し、共産党県議団は反対しました。賛成討論も無いまま、共産党以外の全議員の賛成で可決されました。
 「東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会に出場する本県選手を激励する決議」については、退席して採決に加わりませんでした。

(5)男女共同参画社会の推進、「選択的夫婦別姓導入を求める意見書の提出」を求める請願について

 日本のジェンダーギャップ指数が156カ国中120位と、女性の社会進出は立ち後れた状況になっていますが、森喜朗前オリンピック組織委員会会長による女性蔑視発言などで、一層厳しい視線を浴びています。その上にコロナ禍が、女性がおかれている困難さを一層浮き彫りにしています。
 そういう中で、女性の困難を解消するために、日本社会の根底にある固定的な性別役割分担モデルや制度を見直していくことがいよいよ求められています。渡辺県議は6月23日の予算特別委員会でこの課題を取り上げました。国土交通省の「企業等の東京一極集中に関する懇談会」の資料を踏まえ、県内に残る「男尊女卑」と「妻は家庭に」との性別役割分担が、女性の県外流出に繋がっているのではないかと、固定的な性別役割分担モデルの解消の取り組みを知事に求めました。
 知事は「社会全体としては依然として女性の参画が遅々として進んでいない状況。もどかしい思いを抱えている」「あらゆる世代に気づきや理解を促したい」と応じました。
 また、県議会には、新日本婦人の会山形県本部から「選択的夫婦別姓の導入を求める意見書の提出について」の請願(共産党県議団紹介議員)が提出されました。審査した厚生環境常任委員会では、県政クラブ所属の委員は採択を主張しましたが、自民党の委員は「賛成する人が増えている一方で議論が拮抗している。(請願は)片方の意見だけだ」「いろんな意見がある」などと不採択を主張。関委員は「国の審議会が法改正を答申したが25年間棚ざらしにされ、選択できないのは世界で日本だけとなった。導入賛成の世論は多数となって年々増え続けており、国連からも勧告が繰り返され、『同姓合憲』とした最高裁でも国会での議論を求めている」と採択を主張しましたが、継続審査となりました。
 今年5月、自民党多数の県議会は、県が「2022年度政府施策等に対する提案」(案)に記載した「クオータ制」について削除を求めました。(共産党県議団は削除すべきでないと議長に申し入れ)。
 選択的夫婦別姓制度も、クオータ制についても国連女性差別撤廃委員会から、再三の是正勧告を受けています。日本でも国民多数の合意が広がっていますが、
自民党の対応が問われています。
 共産党県議団はジェンダー平等に向かう流れを前に進める役割を果たしていく決意です。

(6)凍霜害、降雹被害について

 5、6月に発生した凍霜害、降雹害について、サクランボをはじめとする果樹・野菜などで52億円余りという被害が明らかになりました。被害はさらに広がる可能性があるとされます(6月28日現在)。
 共産党県議団は、被害が発生した直後の5月28日、県に対策を早期に示すように口頭で申し入れ、6月3日、山形県農民連が「早期対策の実施」を県要望し、同席しました。
 県は、支援策として減収率が50%以上等(事業実施後、収入保険又は農業共済へ加入)を対象に「肥料・農薬購入費」の最大1/2を支援する独自策を打ち出しました。一方で団体からは「1/2では小さすぎる。」「被害受けていない人は努力している人、面積換算で支援してほしい」との声が出されています。今後、更なる支援の拡充を求め、国会議員団とも連携して国の支援を求めていきます。

(7)教員の増と少人数学級推進について

 6月23日の予算特別員会での渡辺県議の、一コマの授業行うため、どの程度の準備時間が必要かとの問い対し、教育長は「昭和33年の義務標準法制定当時の想定で、1日の勤務時間の半分程度を授業にあてて、残りの半分程度を授業準備などの校務にあてることが適当な考え方」との国会答弁があることを承知していると答弁しました。県が授業の準備等に一日の半分程度あてることが適当と認識したことは重要なことです。
 しかし、現状は、小学校授業の準備時間等は、授業が1日6コマだと、勤務時間内では30分前後しかありません。教育の本質である「教員と児童生徒の人格的なふれあい」や「教育公務員には絶えず求められる研究と人格の修養」の時間が奪われているのが実態です。教員が子どもと接する時間や、授業準備の時間を確保しようとすると、残業をせざるを得ない状況です。
 これは、国が教員を増やさずに、学校週五日制導入や授業時数増加等をおこなってきたことによって、教員の1日の授業数が増えているためです。県は引き続き国に定員増を要請すると答弁しました。
 質問を通じて、県が少人数学級編制に活用している国の加配教員は、減らされている実態も明らかになりました。国が加配教員のうち少人数学級の教員に活用していた一定数(全国で2000人)を専科指導の教員に振替をし、専科指導の教員にしか使えなくしたためです。振替でなく、標準法における基礎定数の学級数に応じた「乗ずる数」を改善し、教員増を図るべきです。
 影響を受けるのは子どもです。県の答弁では、不登校の出現率(6教振策定以降の2015年度と2019年度比)は、小学校で1000人中3.0が5.3人に。中学校は22.22人が31.2人と、全国と比べ低いものの、増加傾向にあることが明らかになりました。児童生徒一人ひとりにきめ細かな指導を行える少人数学級が、不登校も減少させることは県も認めてきていることです。しかし、県は「今年度から2か年にわたり少人数学級編制について検討する」との答弁にとどまりました。国が標準法改正で35人学級を実施してきている今こそ、県としても、少人数学級編制をさらに前に進めるべきと考えます。

(8)副知事人事について

 6月定例会では、自民党議員から副知事人事についての質問が相次ぎました。昨今、全国の地方議会で稀に起こる人事案件の否決(不同意多数)では、議案の性質から相当な理由が求められることが有識者から指摘され、多くの場合に議会多数会派が「政争の具」にしているという批判があります。副知事不在という事態を一刻も早く解消することが望まれます。

以上